「花伝説・宙(そら)へ 〜宇宙を旅した桜たち〜」(長谷川洋一著)
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若田飛行士とともに宇宙を旅した日本全国の桜の種を子供たちが育てる、この星のいのちの美しさを見つめなおす空前のプロジェクト「花伝説・宙(そら)へ!」が始まった。
花をめぐる人間ドラマ、全国各地の子供たちとの交流、スペースシャトルや国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」をめぐる舞台裏、また多摩商工会議所がこの「宙(そら)桜プロジェクト」に加わったいきさつなどを記した感動のドキュメンタリー。 |
<プロローグ> いのちの美しさ
「ちがうな」
桜守(さくらもり)は怒気を含んだ声で言いながら立ち上がった。
「こんなん、今どきのコンピューターで、切った貼ったでこさえたもんやろっ」
私が説明中のカラー刷りの美麗な資料を見下して、彼はこう言い放った。
「命っちゅうもんはな、こんな簡単なものとちゃうで。ちょっと来てみぃ」
そして私は、庭にある圃場に連れ出された。京の晩春。地面には、暖かく、柔らかな陽が降り注いでいた。
「見てみぃ、これが何やかわかるか?」
それは一見、雑草と変わりない高さ30センチほどの苗木だった。誤って踏みつけられれば、それでおわってしまうであろう「いのち」。小さな、はなかい生命体。しかし茎の中に明らかに真っ直ぐな芯が通っていて、凛として伸びている。
「桜はな、2年かかって、やっとこれや。簡単に花が咲くと思ぅてもろたら困る。まず芽吹くかどうかが問題や。・・・・宇宙へほっぽり出して花見やなんて、そうそう言うたらばちあたるで」
私は言葉もなく、己の浅はかさを思い知らされていた。
「花が咲くまでに10年。どうにか立派に育つかどうかを、見極めるのに30年はかかる。・・・・それまでわしは生きちょらん。でも、こうして育ててるんや!」
京都桜守、十六代目佐野藤右衛門。この偉人の熱弁をよそに、可愛らしい桜の樹は、ただあたりまえのように微風にゆれている。それを見ていると突然、この人たちのやっていることの重大さが私には分かった。
いのちの美しさを受け継いでいく人がいる
今回、宇宙旅行をする花の種が確実に芽を出し、育つという保証はない。うまく桜の木が育ったとしても、大樹の森になるころには我々関係者は生きていないし、忘れ去られているだろう。しかし、いのちの美しさを受け継ぐという使命を果たすことができれば、もうそれで充分ではないか。 ・・・・・・・・(本より抜粋)
【著者】長谷川洋一(はせがわよういち)
「花伝説・宙へ!」プロデューサー。有人宇宙システム株式会社主幹技師。 1962年、神戸市生まれ。1986年、東京大学農学部卒業。有人宇宙システム株式会社で国際宇宙ステーションの利用計画に携わる。2008年より宇宙文化事業「花伝説・宙へ!」をたちあげる。 著書に、サイエンスエッセイ「トンデモ科学の大冒険(文芸社)」、山岳小説「鎮魂花(文芸社)」ほか「ダカーポ(マガジンハウス)」のコラムに多数執筆。ラジオでは文化放送などにゲスト出演。
この「花伝説・宙(そら)へ 〜宇宙を旅した桜たち〜」を購入できます。 ランダムハウス講談社 (2009/12/17) 、256ページ、1,575円(税込)
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TEL : 042-375-1211 E-mail : sysope@tamacci.or.jp
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